採用活動とは波をつくっていくこと

私の担当する採用支援のお客様は、地方中小と呼ばれる規模の企業です。大手と明らかに違う点は、知名度がないことや勤務エリアが限定されることのほかに、採用受入に制限があるということ。つまり余剰人員は抱えられないということです。しかもしかも採用予定人数は10名以内が圧倒的に多い。それだけに採用精度が求められます。

 

もちろん、私の仕事はこの精度を上げるための新鮮な情報収集や、対象学生に発見してもらうための仕掛けやタイミングを考えたりすることなのですが、取り組みの中であることに気づかされます。それは、「採用に対しての覚悟や捉え方」というものです。

 

どの企業体も、少し先の市場を見つめれば人財確保は必然的な経営テーマになります。採るだけでなく、そのあとの人生を預かり、生活の糧を提供し、個人も成長させていくと言うスタンス。公開されている情報の美辞麗句ではなく、本質的な器として機能するかどうか、ここは非常に重要です。身近に採用活動に携わっていると、科学的に説明できない「流れ」のようなものを感じずにはいられません。

 

新卒採用をスタートさせるところは、初年度はわからないことだらけだと思います。例えば高額投資したナビ、果たして機能させられるかどうか?説明会、動員はどのようにすればよいのか?選考、魅力を訴え、人を見極めるにはどうすればよいのか?内定、辞退を防ぐにはどうすればよいのか?入社、現在の文化との融合をいかにはかっていくか?採用して一人前にしていくまでにはかなりのプロセスをクリアしていく必要があります。しかし、どこかで必ずつまずき、障壁に当たるのも採用活動と言うもの。どのようにPDCAを回すかが問われているのです。

 

なかなか人が集まらなかったところもやがて人が来てくれるようになります。これは、ナビに掲載すれば前年の情報が流れ続けているので、掲載していないところよりは発見される率が高まっているからです。そうすると、集まらなかったときにひとり、ふたりと来てくれた感動を忘れてしまうのもまた常と言うもの。その気持ちはたとえ100人集まるようになっても持ち続けたいものです。

 

関与している某社ですが、やはり余剰人員は抱えられない方針です。しかし、人とは流動的なので予定通りに春に入れ替わるようなこともほぼありません。シーズン途中でなんらかの対策を、しかも突貫で立てなければならないのです。最初は大変な思いをして人員補充(誰でもいいというやり方はしない)を行っていましたが、ここ数年、思いもよらない状況が起きても、打った施策が合致して結果的に事なきを得ることが殆どになってきました。これはなぜなのでしょう。

 

おそらく、人を採用するに当たり「え?そこまで」とこちらが聞いていても考え抜かれた受入をしている(紆余曲折を経て変遷してきた)経緯があるからだと思います。人に対して真摯であれば、マーケットもそう応えてくれる。一見、偶然のように見えても、巡り巡って目標に到達する。

 

定着するには理由があり、定着しないのにも理由がある。採用の波に乗れるにも理由があり、乗れないにも理由がある。決して、環境や市場のせいではないと感じます。今一度足元を固めて組織作りに挑戦してみましょう。