”定着”について

「ただいるだけで戦力にならない社員は困る」。ある方と先日は話していてこんな話がでました。確かに「適数精鋭」を理想とする中小企業では、余剰人員を抱えることもできない現実。ましてや利益を生まない社員は頭が痛い存在・・とても理解できます。

 

私がクライアントに対してしつこく申し上げるのは「採用~定着~育成~戦力化」という段階を意識して新人を受け入れてくださいということです。しかし、ほとんどの方から「そんなに時間をかけられない」「誰が面倒を見るのか?」といった反論を受ける。確かに一見するととても手間がかかりそうです。

 

しかし、その手間をかけることを初期段階で怠ると、「ただいるだけ」の社員となり下がってしまいかねません。一旦落ちると引き揚げる労力は大変なものになります。まず自社社員として戦力となるためにはいかなることができるようになればよいのかを項目としてピックアップしてみてください。それを、習熟にかかる時間で並べ替えます。簡単にはこれで計画は完了です。あとはどのようにこれを教えていくか、設計します。

 

教える際の留意点は大きく2つ。一つ目は「教え方の標準化」。聞く人聞く人すべての教え方が違っていれば混乱は必至。この辺は念入りに準備していく必要があります。二つ目は、教える対象新人の特性をよくつかむこと。この多様化の時代、一定のマニュアルを一律に教えていけるほど楽ではありません。考え方や仕事の目的もそれぞれが違うもの。「うちの会社ではこういうルールだ!」などと言うと反発を食らうことは明確。つまりは、理屈を分からせることが面倒臭いところなのです。今の新人は難しいと言われる所以は、この「相互理解」を端折って仕事を教えていこうとするやり方から多くは生まれています。つまりこの部分が定着段階。ベクトルを合わせる期間が必要なのです。「しかしアフターファイブもつきあいが悪い」「飲みに行ってもいきなりウーロン茶しか飲まない」などと言ったご意見もありますが、よく考えるとそれは教える側にあわせてほしいが故の理屈。彼らはどういったやり方で相互理解を図ればよいのかはもっと研究していく必要があります。

 

「ただいるだけでは困る」のですが、そうならないようにしていくことも受け入れた組織の役割。育成と躾の狭間で苦しむ人事担当者のお話もよく聴きますが、主役は新人でも主導は会社側にあるはず。振り回されないためにはやはり準備や計画に基づいた「定着~育成」フローが必要だと思います。ただいるだけにしてしまうのは、多くの場合組織側に課題があると言えます。今後の人材難(特に地方)を考えると、早めに検証して時代の潮流に適応していくことが必要です。