会社にとって社員の進退問題は避けては通れない道と言えます。特に中小企業のほとんどでは余剰人員を抱えていないため、退職=補充のための採用活動となることも多いでしょう。今回は「組織に残る人材」について考察してみたいと思います。
最初に、「辞める」と意思表示した社員はもう止まらないと考えたほうがよいと思います。もちろん慰留のための面談や行動は必要だと思いますが、多くの場合、止まりません。意思表示する前に原因があるのです。
そもそも人材がミスマッチ
これは採用の段階で、自社適性を見誤ってしまったということです。自社にフィットする人材要件をしっかり練り、選考力を磨きましょう。
帰属意識の醸成の失敗
時短や社外での交流が減少している昨今、オンタイムのコミュニケーションもままならず、いきなり育成に走ると抵抗感が出てきます。ザイアンスの法則よろしく工夫して多くの接点を持ち、先輩や上司は自己開示をしながら「心の扉を開く」ことをしていきましょう。
本人の方向性、評価の現在地点、ビジョンの旗の3点を明確に
今どきの若者は最初、責任ある立場になりたがりません。いかに責任ある立場が魅力的かは先輩・上司が示さなければならないでしょう。無意識に「忙しい」「しんどい」と言っていては誰も目指しません。また、本人が成りたい姿になるため今どこにいるかを「承認」と「テーマ付け」する必要があります。目標設定は一緒に行って支援していけばよいでしょう。
ロールモデル要素の顕在化
完全な人間はいません。しかし「Aさんは販売力に定評がある」「Bさんは人望はピカ一だ」と部分的には手本がいます。その焦点を公式に会社や上司が推奨することで一定の物差しになります。
上記4点に起因する進退問題は、やはり本人よりも組織側が対策を打っておかなければなりません。主体性の名のもとに、自由気ままな放任になることが多い入社後。本人の仕事フェーズや特性、何に目標を設定して仕事をしているかを管理する必要があります。もちろん、承認や評価はこまめにすることは習慣化すべきであり、ダメ出しばかりされて伸びるわけがありません。
例えば一本の映画。主役がいて、準主役がいて、重厚な脇役がいて、バイプレイヤーと呼ばれる役がいて、駆け出しの俳優がいて、まだセリフももらえないエキストラがいて、そういう風にして成り立つと思います。会社組織においてほとんどの新人はエキストラスタートだと思います。そこで存在感を発揮してキャリアが上がってギャラもあがり多くの仕事が舞い込んでくるのだと思うのですが、「エキストラのまま主役級のギャラをくれ」と言ってきたり、期待したりする人がとても多い。主要な役柄は華やかな分、求められる成果やそのプレッシャーは計り知れないものですが、まずそんな大変なことはやりたくない。あくまで組織に依存しながら要求は高いというものです。また、甘言や会社批判をする先輩は好きで、仕事の指導を本気でしてくれる人は敬遠する。そうなってしまう前に、しくみやイズムを確立させていかなくてはなりません。自然にうまくいくことはないでしょう。
自社適性基準を基に、選考の入り口で弾いてしまうか、社内に入れて教育するか。いずれにしても採用は投資なので回収が必要なのです。「今どきの若者が・・」すべて悪いのではありません。終身雇用が当たり前だった、給与も勤続年数に応じて保障されていた前時代には「しなくてよかったこと」を今はしなくてはいけないのです。